目次
島原の乱の勃発と総大将・天草四郎
当初、松倉重政はキリスト教布教を黙認していましたが、徳川家光に叱責されたことで一転。厳しいキリシタン弾圧を行います。同時期に新たな居城にする島原城を築城し、領民はその夫役(ぶやく)などの重税にも苦しみました。跡を継いだ子の松倉勝家は、父以上の重税を課し、さらなる苛政を敷きます。
そこに凶作と飢饉が重なり、寛永14(1637)年10月、ついに領民の不満は頂点に達しました。年貢未進だった百姓の妊娠中の妻が拷問死させられたことなどをきっかけに各地で蜂起。島原城に攻め込みます。数日後には、有明海を挟んだ天草島で天草四郎を総大将としてキリシタンが立ち上がり、合流した一揆勢は約3万7000人(2万7000人とも)にのぼりました。
島原の乱で天草四郎らが籠城した原城の堅い守り
同年11月9日、幕府は一揆鎮圧のため板倉重昌を上使として派遣します。しかし事態は予想以上に重大だと知り、板倉重昌が現地到着前の同月27日に、老中の松平信綱を新たな上使に任命し急行させます。
一方、一揆勢は島原城を落とせませんでしたが、12月1日から原城の修復を始め、兵糧を運び込んで立てこもりました。板倉は同月5日に島原城に到着すると、参陣諸藩の態勢を整え攻撃を始めます。しかし、原城の守りは堅く、落とすことができませんでした。焦った板倉重昌は、翌15(1638)年1月1日にみずから先頭に立って攻撃を仕掛けるも、城内からの銃撃で戦死してしまいます。
島原の乱の終息!天草四郎と原城の最期
島原に到着した松平信綱は、オランダ船に援助を要請して海から艦砲射撃を行いました。また、石火矢台という砲台を作らせて大筒で砲撃したり、城内に向けて55mの坑道を掘らせたりしたものの、力攻めは難しいと判断、兵糧攻めに切り替えます。城内の兵糧が尽きたとみるや、2月27日に総攻撃を開始。翌日、原城は陥落しました。
一揆勢のほとんどが戦死し、生き残った者も老若男女を問わず処刑されました。その後、幕府は原城を徹底的に破壊。天草四郎ら首謀者の首を長崎に送ってさらしました。
島原の乱の舞台・原城跡の発掘調査でわかる当時の様子
それから長い時を経た1992年、原城跡の発掘調査が始まり、その遺物から当時の様子がわかってきました。
本丸西側では、規則的に並んだ半地下式の小屋跡が見つかります。
また、長崎市内のキリシタン関連遺跡からよく出る花十字紋瓦が、有馬で初めて出土しました。ほかにも、メダイや十字架などキリシタンにまつわる遺物が多数発見されました。青銅製のメダイは2005年までに17個出土。人骨の歯の近くで見つかったものもあり、死に際して口に含んだと思われます。
さらに、出土した石垣などの城の遺構には築城当時の特徴が見られ、廃城後も城郭としての機能を十分に備えていたことが判明しました。それは、簡単な修復で一揆勢が3か月にわたり幕府軍の猛攻に耐えることができた要因とみて間違いありません。
原城跡
発掘調査で本丸にあった4か所の虎口のうち3か所が明らかになりました。虎口とは城の出入り口のこと。正面玄関となる本丸の虎口空間は、東西80m、南北90mもありました。本丸面積の半分を占め、国内最大級との報告もあります。
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