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能登の「キリコ祭り」は祭りによって内容が異なる!?

担ぎ手の減少にともない、能登のキリコの本数は年々少なくなっていますが、大切に保管されているものも含めると700~800基ものキリコが担ぎ出されています。一つの地域で同じ名称をもった祭りがこれだけ多く存在するのは、日本では能登半島だけのようです。

キリコ祭りのおもしろい点は、キリコを担いだまま海へ入ったり、車輪を付けたキリコをぶつけ合ったりと、祭りによって内容が異なるところです。

さらに、地域によってキリコの形や装飾も異なります。自分たちの地区のキリコを一番に仕立てるために、大きさや豪華さ、機動性など、それぞれのキリコの個性や魅力を追求するからです。

地区同士でキリコの出来映えを競うという特性は、半島という地理的閉鎖性のなかで地区ごとの団結力や祭りへのモチベーションを高め、祭りを独自に発展させてきたのです。

能登の「キリコ祭り」は祭りによって内容が異なる!?
日本遺産「灯り舞う半島 能登~熱狂のキリコ祭り~」活性化協議会HP「能登のキリコ祭り」をもとに作成

能登のもてなし文化「ヨバレ」

さらに、能登には「ヨバレ」という独特のもてなし文化があります。親戚や近所の人々と酒や食事を囲み、親睦を深めることをいいます。祭りの夜は多くの家でヨバレが開催され、家々は玄関や道沿いの窓を開け放つため、1年で最も集落が賑やかになると言っても過言ではありません。

だからこそ、祭りは地元の人にとって特別な意味をもちます。故郷を離れて暮らす人が、盆や正月には帰省しなくても、祭りの日だけは必ず帰ってくるほどです。

金沢には歴史ある祭りがない

しかし、金沢はどうでしょう。金沢の祭りといえば、「金沢百万石まつり」を思い浮かべる人がいるかもしれません。確かに金沢最大のイベントではありますが、これは戦後に始まった祭りで、伝統と呼ぶにはしっくりきません。伝統文化が息づく城下町でありながら、なぜ歴史ある大きな祭りがないのでしょうか。

金沢に歴史ある祭りがない理由と「盆正月」

江戸時代、金沢の各地区で神社の祭りなどが盛んにおこなわれていました。しかし、民衆が大々的に開催する祭りはなかったようです。一説によると、一揆を恐れた加賀藩が大勢で集まるのを禁じていたからだといいます。

加賀は真宗王国といわれるほど、浄土真宗の勢いが強い地域でした。金沢城が建てられた地には、かつて尾山御坊(おやまごぼう)(金沢御堂)という寺院があり、そこを拠点に加賀一向一揆が起こったほどです。真宗門徒の結託に加賀藩も目を光らせていたため、集会を禁じたのも無理はありません。

しかし加賀藩は、集会を禁止する代わりに「盆正月」という藩主催の祭りを企画して、人々のガス抜きの場を用意しました。盆と正月のにぎわいが一気にやってくるという意味で、この名が付いたようです。

最初の盆正月は、江戸中期に開催されたという記録があり、5代藩主前田吉徳の家督相続を祝うものでした。これ以降、明治を迎えるまでに盆正月は約40回開催されています。江戸時代後期には、宝船の作り物や獅子舞が行列を成す形式が定着し、次第に豪華になっていったとされます。

「金沢百万石まつり」には盆正月の名残が感じられる

明治維新の藩政廃止によって、加賀藩の消滅とともに盆正月も姿を消しました。しかし、百万石まつりのメインイベントが利家を主役とする武者行列であることを考えると、盆正月の行列の名残が今も感じられるのです。

金沢百万石まつり

住所
石川県金沢市市内各所
交通
JR金沢駅から北陸鉄道バス香林坊方面行きで8分、香林坊下車すぐ(金沢市役所)
料金
要問合せ

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