目次
栃木の街道①:東山道
701(大宝元)年、日本初の行政法・民法・刑法をそろえた本格的な法律である大宝律令が定められ、これに基づいて都と地方を結ぶ7つの官道の整備が進められました。そのうちのひとつである「東山道(とうさんどう)」は、現在の地名でいうと滋賀から岐阜、長野、群馬を経由、栃木を通過して宮城や岩手、秋田に至る、当時としては最も長い道でした。栃木県内のルートを見ると、上野国(こうづけのくに)(群馬)の新田(にった)から足利に入り、佐野、栃木へと両毛(りょうもう)地域を進み、宇都宮から鬼怒(きぬ)川を渡って、黒羽(くろばね)、那須を通過して白河に至るものでした。
街道に設置された宿場「馬家」
街道には30里(当時の1里は約533m、約16㎞)ごとに「駅家(うまや)」と呼ばれる宿場を設置し、人馬や宿舎が置かれました。道幅は約6m、その両側には側溝もあり、かなり本格的に整備された道であったことが、発掘調査などで明らかになっています。
栃木の街道②:奥大道
鎌倉時代になると、幕府のある鎌倉と各地を結ぶ、いわゆる鎌倉街道が整備されるようになります。鎌倉時代の歴史書である『吾妻鏡(あづまかがみ)』などを見ると、鎌倉から東北へ向かう鎌倉街道の中道(なかつみち)は「奥大道(おくだいどう)」とも呼ばれ、下総(しもうさ)・古河(こが)から下野に入り、小山から宇都宮、喜連川(きつれがわ)から芦野(あしの)を縦貫して白河へ至る幹線道として重要視されていたことがわかります。
栃木の街道③:日光街道・奥州街道
徳川家康によって江戸幕府が開かれ、太平の世が訪れた近世、下野の街道と、沿道の宿場や村落は大いに発達します。まず江戸・日本橋から発し、小山、宇都宮を経て、家康の墓所をおいた日光を結ぶ街道が、「日光街道(日光道中(どうちゅう))」として整備されます。そのうえで、宇都宮から分岐して東北に向かう幹線の街道は、「奥州(おうしゅう)街道(奥州道中)」と呼ばれるようになりました。
栃木の街道④:日光例幣使街道
さらに、朝廷の使者が京都から日光へ向かう「日光例幣使(れいへいし)街道」も整備されます。こうした交通網の整備は、結果として地域内での物産の移動を促し、それによって新たな産業や物流がおこり、それに合わせて脇往還(わきおうかん)(脇街道)や河川交通も発達していきました。
栃木の街道⑤:国道4号・東北自動車道
そして現在、栃木県内の基幹となる街道が国道4号です。東京日本橋から青森県に至る国内最長の国道で、江戸時代の奥州街道を前身として整備されました。栃木県内では、小山市から宇都宮市、さくら市、矢板市、那須塩原市を経て、福島県白河市に至ります。さらに、国道4号に沿うようにして東北自動車道が整備され、栃木と東日本の物流を支えています。
各街道の位置関係
栃木県内を通り、関東や関西と東北を結ぶ街道は、古代にも中世にも、近世から現代になっても、すべて県中央部の平地に、直線的に造られていることがわかります。それに合わせて江戸時代には、日光街道や日光例幣使街道、脇往還なども整備されました。
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Part.1 地図で読み解く栃木の大地
・雷が多い理由は地形にあり!
・奥日光は男体山がつくった?
・日本最大の渡良瀬遊水地ができた理由
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Part.2 栃木を走る充実の交通網
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・幾多の苦難を乗り越えた真岡線
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・要衝・下野国を貫く街道の変遷
・舟運で“蔵の街”となった栃木市
Part.3 栃木で動いた歴史の瞬間
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・遺跡からたどる東山道と律令期の下野国
・平将門を討った豪傑・藤原秀郷とは何者か?
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・名族宇都宮氏の栄枯盛衰
・ザビエルやフロイスも讃えた「坂東の大学」足利学校
・江戸幕府最大の聖地・日光東照宮創建
・廃藩置県、そして栃木県誕生!
・「一の宮」が2つ? 日光二荒山神社と宇都宮二荒山神社
・不毛の原野が酪農王国に! 那須野が原の大開拓
Part.4 栃木で生まれた産業や文化
・木綿、紬、絹織物、麻…栃木は織物の名産地
・益子焼が始まってまだ170年足らず? 益子が「陶器の里」になったわけ
・半世紀にわたって生産量日本一!! 栃木はなぜいちご王国になった?
・関東平野が工業誘致にぴったりだった? 宇都宮は新たなものづくり都市へ
・「それって栃木?」県名抜きで知名度の高い観光名所
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