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宇都宮氏は鎌倉幕府を支える有力御家人となる

このように、鎌倉幕府成立初期こそ、不安定な立場にあった宇都宮氏ですが、後鳥羽上皇と幕府執権の北条義時が戦った承久の乱では幕府方に与して活躍。その勲功として、伊予国の守護職、また美濃国の守護職にも任じられます。こうして鎌倉幕府を支える有力御家人として確固たる地位を築いた宇都宮氏は、6代泰綱(やすつな)が幕府の要職である評定衆(ひょうじょうしゅう)に、7代景綱は訴訟を審理する引付衆(ひきつけしゅう)の筆頭を務めるなど、幕府内での地位を高めました。

宇都宮氏は下野の名門武士団として栄え続ける

その後、鎌倉幕府が足利尊氏(たかうじ)に滅ぼされ、室町幕府が開かれてからも、宇都宮氏は下野の名門武士団として引き続き栄えていきます。その名声は朝廷が南北に分かれて争った南北朝の時代になっても高く、南朝の勇将・楠木正成は、戦上手な宇都宮氏9代公綱(きんつな)を「坂東一の弓矢取り」として争いを避け、10代氏綱は室町幕府が分裂した観応の擾乱(かんのうのじょうらん)で、足利尊氏の危機を救う大活躍をしています。

宇都宮氏は秀吉から改易を言い渡される

その後も下野で勢力を保った宇都宮氏ですが、22代国綱(くにつな)の時代、豊臣秀吉が天下を統一したあとの1597(慶長2)年、突如秀吉から領地を没収され、改易を言い渡されます。検地に際して秀吉の怒りをかった、あるいは家督をめぐるお家騒動を咎められたともいわれていますが、明確な理由は定かではありません。いずれにしても、平安以来の名門一族の最後にしては、あまりにあっけないものでした。

宇都宮氏の文芸活動は『小倉百人一首』の原型となった

400年以上、22代にわたる宇都宮氏の栄枯盛衰のなかで注目すべきは、5代頼綱(出家して蓮生(れんしょう)と名乗る)を中心とした文芸活動です。鎌倉幕府を支える御家人として政務や領国経営をする一方、宇都宮頼綱は京都や鎌倉の文化人と盛んに交流しました。特に和歌に通じたことから、一族によって「宇都宮歌壇」ともいうべき地方歌壇を形成します。また、京都では当代随一の大歌人である藤原定家と縁を持ち、自らの山荘の襖に貼る和歌百首を定家に選んでもらったといいます。これがのちの、『小倉百人一首』の原型になったとされています。

宇都宮氏ゆかりの地

市内には、二荒山神社をはじめ、宇都宮氏ゆかりの場所が残ります。5代頼綱が開基した清厳寺のほか、興禅寺、生福寺、慈光寺は歴代の当主が開基。居城であった宇都宮城は、現在公園になっています。

「宇都宮」の名前の由来は?

宇都宮という名前の由来には、さまざまな説があります。そのひとつが、宇都宮明神(二荒山神社)に関係するという説。同社が下野国一の宮であったことから、「いちのみや」が「うつのみや」に転訛し、これに文字を当てて、いつしか「宇都宮」になったといわれています。

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