山形盆地の形成に大きくかかわるプレート
こうした地形の形成に大きくかかわっているのがプレートです。地球表面は、プレートと呼ばれる移動する何枚もの巨大な岩盤で覆われています。そして、日本列島の周囲では、大きく分けてユーラシアプレート、北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレートの4枚がせめぎ合っています。ユーラシアと北米プレートが大陸をつくる大陸プレート、太平洋とフィリピン海プレートは海洋底をつくる海洋プレートです。ともに地球の最外殻の地殻とその直下にある上部マントルの一部からなる硬い岩盤で、高密の海洋プレートは低密度の大陸プレートの下へ海溝(かいこう)で沈み込んでいます。この沈み込む場所は、沈み込み帯と呼ばれています。
山形盆地はプレートや地殻変動などによってできた
東北地方の太平洋沖には日本海溝があり、そこで太平洋プレートが北米プレートの下へ沈み込んでいます。このとき北米プレートには横からの圧力が加わり、断層や波状に変形した褶曲(しゅうきょく)という激しい地殻変動を生じます。奥羽山脈、出羽山地に加えて北上山地の形成は、プレートの沈み込みにともなう東西圧縮に起因し、それぞれが隆起してできたものなのです。さらに、東西圧縮でできた凹部は、山から流出した土砂などで埋められ山形盆地などの内陸盆地が形成されました。このため、沈み込み帯と平行に山脈、盆地が広がっているのです。
山形盆地の最深部は西に偏っている
なお、山形盆地の最深部は中央部ではなく、大きく西に偏っていることがわかっています。盆地底の断面を見ると、東から西へ向かって徐々に低下し、最深部西側で急激に高くなり出羽山地に続いています。この境目には「山形盆地西縁構造線」と呼ばれる逆断層が走っていて、この構造線を境にして相対的に東は沈降、西は隆起しています。
山形盆地の特徴は扇状地
山形盆地の大きな特徴は、東半分を乱川扇状地(みだれがわせんじょうち)、立谷川(たちやがわ)扇状地、馬見ヶ崎川(まみがさきがわ)扇状地といった奥羽山脈西麓に発達する3大扇状地が占めていることです。扇状地は、河川が土砂などが堆積してできたものであり、山形市は馬見ヶ崎川扇状地上に築かれました。この扇状地は長年、馬見ヶ崎川が蔵王の土砂を運び、数百mも堆積してできたものです。
山形盆地の扇状地と馬見ヶ崎川
扇状地の特徴に、農業に適した土壌と豊富な地下水(伏流水)があります。その半面で、馬見ヶ崎川は何度も洪水を繰り返し大きな被害をもたらしてきました。江戸時代初期の1623(元和9)年、馬見ヶ崎川が大洪水を起こし町中が水びたしになったばかりか、山形城の堀も壊れてしまいます。当時の山形藩主・鳥居忠政は、翌年から馬見ヶ崎川の流路を町から遠ざける大工事に取りかかり、現在と同じような流れに変えました。それとともに馬見ヶ崎川に5カ所の取水口を設けます。これがのちの「山形五堰(ごせき)」の始まりといわれています。山形市は、扇状地の恵みをさまざまな工夫で最大限に生かし、発展してきたのです。
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・山形盆地の成り立ちと扇状地に発展した県都・山形市
・大江町の最上川川床で発見!ヤマガタダイカイギュウって何だ!?
・河川がつくった肥沃な庄内平野を35㎞におよぶ庄内砂丘が守る
・最上川・五百川峡谷の誕生と流域に形成された河岸段丘
・どうやって誕生し段丘が発達?山形唯一の有人離島「飛島」の謎
・冬の名物・美しい樹氷はどうして蔵王山に形成されるのか?
…などなど山形のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 山形を駆け抜ける鉄道網
・急勾配と豪雪を克服し新庄へ至る全国初のミニ新幹線・山形新幹線
・急峻な板谷峠で奥羽山脈越え!逞しき幹線・奥羽本線の今昔
・九州~北海道の貨物車両が走り日本海縦貫線をなす羽越本線
・日本初の交流電化路線にして今や貨物の重要路線の仙山線
・最上川の絶景峡谷を走る!新庄と余目を結ぶ陸羽西線
・三山・高畠・尾花沢の3路線 山形交通の鉄道路線網とは?
…などなど、山形ならではの交通事情を網羅。
Part.3 山形で動いた歴史の瞬間
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・領主交代に領民が抵抗! 天保の国替え反対一揆とは?
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