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新潟交通電車線の開業と全廃までの歴史

1933(昭和8)年4月にまず東関屋(ひがしせきや)〜白根(しろね)間が開業し、同年7月に県庁前~東関屋間、8月に白根~燕間が開業し全通。当初は県庁前駅から新潟駅前駅まで延伸を予定し、このため通過する萬代橋は広い幅員でつくられましたが、日華事変の物資不足により延伸は実現しませんでした

1943(昭和18)年12月、新潟交通が発足し社名変更。戦後は輸送量も増え、車両など設備の増強に追われますが、のちのモータリゼーションの到来により輸送量は減少し、収支は赤字に転落します。合理化が図られますが収入は減少の一途で、まず、道路を併用軌道として走行していた白山前~東関屋間を1992(平成4年)4月に廃止します。この区間は、商店や民家が立ち並ぶ狭隘な道路に線路が敷かれ、鉄道線の大型電車が走り異彩を放っていました。翌年8月には月潟(つきがた)~燕間が廃止され、他路線との接続がなくなり孤立。そして1999(平成11)年4月、東関屋~月潟間が廃止され全廃となりました。

新潟交通電車線で活躍したクハ45形

電車はグリーンとイエローの車体色で長く親しまれていましたが、最後まで活躍した車両は、日本車輌製造製の「日車標準車体」を使用した主力のモハ10形と同形のモハ18形モハ19形モハ20形、そしてクハ45形でした。なかでもとても貴重だったのがクハ45形です。クハ45形は小田急電鉄の前身、小田原急行鉄道の201・501・550形電車で、江ノ島線が開通した1929(昭和4)年からの製造。半鋼製車で、501形は車内にクロスシートを備え、「週末温泉急行」にも使用されました。週末温泉急行はのちの小田急ロマンスカーのルーツにあたる小田原急行鉄道の華であり、1935(昭和10)年6月から新宿~小田原間をノンストップで運行を開始し、同区間を90分で結びました。当初は車内に沿線案内と音楽をレコードで流すことが予定され、吹き込みには当時新宿にあった劇場、ムーランルージュ新宿座の看板女優だった明日待子(あしたまつこ)が担当。しかし、走行中の振動でレコードの針が飛んでしまい、失敗に終わったというエピソードもあります。のちにクハ45形電車は小田急電鉄の1400形となり1969(昭和44)年までに廃車。一部が越後交通、弘南鉄道(青森県)など地方私鉄に譲渡され、新潟交通には車体のみが供給されていました。

新潟交通電車線跡と活躍した車両の現在

現在、クハ45形は全車が廃車となり、1両が埼玉県の企業により静態保存されています。そのほか、旧月潟駅(現・南区月潟)にはモハ11、電動貨車のモワ51、ラッセル車のキ116の3両が保存され、同駅周辺の廃線跡約2.2㎞は遊歩道のある「旧月潟駅周辺公園」として整備されています。

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1945年(昭和20年)の終戦以降に廃止となった鉄道路線を地図上に表示。かつての路線網の充実ぶりに驚かされます。各廃線にも解説コメントを添えるのはもちろんのこと、歴史的価値の高い建造物や橋梁、隧道(トンネル)などの遺構群のプロットにも注力。日本の発展とともに歩んだ鉄道の歴史を、地図を辿りながら読み解きます。

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Part.1 地図で読み解く新潟の大地

・新潟の地質・地形概論(「米納津隕石、櫛池隕石」)
・約3000万年前に誕生した佐渡島 火山や地殻変動の痕跡がいっぱい!
・かつて圧倒的な産出量を誇った佐渡島の金銀山が生まれた秘密
・プレートの沈み込みが生む奇跡!糸魚川地域でヒスイが採れるわけ
・ヒスイ峡に3億年前のサンゴ礁!? 石灰岩でできている明星山の秘密
・日本列島を分断する見えない溝 フォッサマグナとはいったい何か?
・最長70㎞で10列をなす新潟砂丘は信濃川と阿賀野川がつくった!?
・約40年前から形成され始めた中津川に広がる河岸段丘の絶景
・約1000万年前の海底火山が生んだ新潟市・間瀬海岸の奇岩や沸石
・上信越高原国立公園・清津峡 圧巻の渓谷と柱状節理ができるまで
・産出量は文句なしの全国1位! 新潟県に油ガス田が多いわけ
・約300万年で2000mも隆起! 八海山が秘める地殻変動のすごさ

Part.2 新潟を駆ける充実の交通網

・東京と新潟をいかにして結ぶか?直江津線として生まれた信越本線

ほか、上越新幹線・北陸新幹線、上越線、飯山線、越後線、北越急行ほくほく線、えちごトキめき鉄道、新潟交通電車線、蒲原鉄道線などを紐解く。

Part.3 新潟の歴史を深読み!

・古代史総論/縄文時代 火焔型土器
・弥生時代 玉作と稲作
・越国が成立しやがて三国に分かれる
・中世史総論 城氏の興亡
・波月条絵図はなぜつくられた?
・上杉氏と長尾氏の複雑な関係(謙信による越後統一まで)
・御館の乱を経て景勝が越佐統一
・近世史総論……越後平野の開発
・鉱山都市相川の発展
・近世の交通
・近現代史総論
・北越戊辰戦争
・戦時下の新潟

Part.4 新潟で育まれた産業や文化

・大河津分水
・燕三条の金物
・西山・東山・新津の三大油田ほか新潟に発展した石油関連事業
・コシヒカリ
・越後杜氏と日本酒/越後縮
・冬の新潟が豪雪地帯となるわけと雪がもたらした観光業

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