目次
北海道開拓への道のり②:蝦夷地から北海道への改称と開拓使の設置
戦後、明治政府は開拓使を設置し、蝦夷地の開拓と統治を任せました(箱館府の廃止)。そして蝦夷地を「北海道」と改称し、大宝律令(たいほうりつりょう)の国郡里(こくぐんり)制を踏襲するかたちで11国86郡が設置されたのです。
開拓使は各分野の外国人技術者を招いて当時の先端技術を導入し、北海道の開拓を進めました。札幌農学校(北海道大学の前身)を開校したクラーク博士も、そうした「お雇い外国人」のひとりでした。
なお、五稜郭開城後に東京で収監された榎本武揚は、1872(明治5)年に特赦で釈放されたのち、開拓使に任官しています。
北海道開拓に貢献したクラーク博士像(北海道大学設置)
北海道開拓への道のり③:開拓使の廃止で北海道は3つの県に分割
1882(明治15)年に開拓使が廃止されると、北海道は函館県、札幌県、根室県の3県に分割されました。翌1883(明治16)年には北海道全体を管轄する農商務省北海道事業管理局が置かれ、この時代を「三県一局時代」と呼びます。この時代には警察署や警察分署が増設されたり、役所の整備が進められたり、警察官・収税官・監獄所官などの官員が増加されました。
黒田清隆を頂点に薩摩藩出身者で固められた体制への批判もあり、開拓使は廃止。3県と北海道事業管理局が置かれました。
北海道開拓への道のり④:労働力には囚人が使われた
ちょうどこの頃、1881(明治14)年に樺戸集治監(かばとしゅうちかん)、1882(明治15)年に空知(そらち)集治監、1885(明治18)年に釧路集治監と、全国6集治監のうち3つまでが北海道で開庁しました。
集治監は囚人を収容する監獄の一種ですが、受刑者を労役に服させることを重要な目的としています。たとえば空知集治監の場合、幌内炭鉱(三笠市)での採炭が主業務で、同炭鉱の労働者のうち8割以上が囚人であったように、北海道の3集治監は囚人を開拓事業に従事させたのです。
なお、道内には炭鉱が数多くあったことから、採掘資源を輸送するために鉄道網が整備されていきました。
北海道開拓への道のり⑤:北海道県庁が置かれて「北海道」が誕生
三県一局体制は1886(明治19)年に統合され、北海道庁が置かれました。この北海道庁が第二次世界大戦後の1947(昭和22)年に北海道となり、現在に至ります。
二重行政が問題となり、三県一局は早々に廃止。新たに設置された道庁は総理大臣直属で、開拓行政の全権限を握っていました。
北海道開拓その後:北海道の第二次世界大戦~現代まで
戦時中、北海道の各地も空襲を受け、軍需産業の多かった室蘭、釧路、根室では多大な被害が出ました。そしてポツダム宣言受諾後に千島列島がソビエト連邦から攻め込まれ、いわゆる「北方領土」問題が生じることになるのです。
高度経済成長期には石炭から重油へと燃料転換が図られ、道内の炭鉱は次々と閉山していきました。
現在の北海道は、過疎や自治体の財政破綻に直面しながらも、「食と観光」を戦略的産業に位置づけて「北海道」のブランド化を図っている最中です。
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地球規模のプレート運動が北海道の大地と山々をつくる!
むかわ町穂別で発見された新種恐竜カムイサウルスとは!?
国内最大の湿地・釧路湿原が3000年以上も陸地化しない謎 ほか
Part.2 北海道を駆け抜ける鉄道網
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Part.3 北海道で動いた歴史の瞬間
4000年前の縄文時代に築かれたストーンサークルとは何か?
海を駆け巡る北の民アイヌ 樺太進出を狙い元と戦う!
松前藩が誕生し支配体制が確立! 南下を狙うロシアとのにらみあい
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Part.4 北海道で育まれた産業や文化
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北海道らしい大規模農業は開拓時代に黒田清隆が提唱した!
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<コラム>
データで分かる全189市区町村 人口、所得、農業・漁業
初三郎が描いた北海道の鳥瞰図
過酷な気候と労働が生んだ 小林多喜二のプロレタリア文学
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