イラン革命で大転身したイラン
イランではお酒は禁止で、人を堕落させるアメリカ文化はよろしくない。でも呑みたい人も多いからノンアルコールビールを販売するし、学生はアメリカの大学を目指しています。イランには、本音と建前のようなものがあるらしい。
ここはアケメネス朝やサーサーン朝がかつて世界の覇権を争ったペルシャ人の国、イランです。彼らは7世紀にイスラム化しましたが、アラビア語に染まらずペルシャ語を守りました。16世紀にはサファヴィー朝を建て、オスマン帝国に屈することなく戦いました。
19世紀に入ると、イランに西洋が介入し始める
しかし、19世紀以降の後続王朝の頃に英露が侵入します。ロシアが一部領土を奪い、石油を狙うイギリスが介入を強めたのです。そのまま第一次大戦に突入し戦後も混乱が続きました。そこへ1925年、軍出身のレザー・ハーンが登場してパフラヴィー朝を建てます。この王朝が国名をイランに変えました。
イラン革命がおこったのは、今から45年前
レザー・ハーンの息子パフラヴィー2世は、強引に歪んだ近代化や親アメリカ政策を展開しました。反発した大衆を率いシーア派指導者ホメイニ師が、イラン革命を起こし(1979)、イランはシーア派最高指導者が国を率いる政教一致体制となります。
イラン革命の際、世界は突然、イランが宗教国家に変貌したことに驚きます。イラン革命後、酒の味を覚えたイランの富裕層は、アメリカに逃げました。またイラン革命の変革に乗じ隣国イラクが侵攻、イラン・イラク戦争が勃発しました。イランの革命輸出を恐れた欧米は、イラクを支援します。このためイランは苦境に陥りました。停戦は互いに疲弊しきった8年後の1988年でした。
近年は核開発が注目されています。イランは平和利用といいますが、欧米は軍事利用を懸念しています。オバマ米大統領時代に合意が成立した「核開発への厳しい制限と査察」と引き換えに、欧米は経済制裁の撤廃を約束しました。しかしトランプ大統領が合意から離脱して以降、再び緊張が走っています。
イランを知るキーワード
イランのキーワード:テヘラン自由の塔
1971年に、ペルシャ建国2500年を記念し建造されました。当時はパフラヴィー2世が強引に西洋近代化を進めた時で、近代を取り入れたデザインです。
イランのキーワード:イスファハン
サファヴィー朝の都として、イランで16世紀から繁栄しました。「世界の半分がある」と称えられました。街の中心イマーム広場には、イランが誇るモスクがあります。
イランのキーワード:ペルシャ絨毯
イランはペルシャ絨毯の本場です。イラン北西部のタブリーズにあるバザールは歴史と長さが世界一とされ、ペルシャ絨毯も人気商品として販売しています。
イランのキーワード:ノウルーズ
旧暦元旦を祝う祭り。祭りに先立って、顔を黒く塗った道化が春を告げ歌います。シーア派の国イランでは、殉教者フサインを偲び、自らの体を傷つけるアーシュラー祭も有名です。
イランのキーワード:イランの名産ピスタチオ
生産量が世界トップクラス。イランピスタチオ協会はピスタチオが回転する愉快なホームページを作り、頑張って宣伝に勤しんでいます。
イランのキーワード:ルート砂漠
イラン南東部の非常に暑い砂漠で、気温70度という世界記録を叩き出したことがあります。イランの国土は内陸の砂漠を山々が囲んでいる地勢です。
イランのキーワード:マスク
イラン南部の離島などでは、長方形のマスクで顔の上部を覆います。まるで仮面のようです。若い女性はこれを嫌がり、年配の人が着けています。
イランのキーワード:ターロフ文化
「お先にどうぞ」「そちらこそどうぞ」と互いに入店を延々と譲り合うような独特な礼節、社交の文化があるイラン。外国人に強要はしません。
イランのキーワード:愛の詩人 ハーフェズ
14世紀に活躍。イラン南部シーラーズ生まれで、生涯この街で過ごしました。今も墓地に参拝客が絶えません。ドイツのゲーテもファンだったといいます。
イランのキーワード:みんな大好きチェロケバブ
イランのソウルフードの1つ。羊肉などの串焼きとサフランライスがセットになった定食。サフランは、イランで欠かせない香辛料です。
イランのキーワード:ズールハーネ
イラン式の筋トレジムで、皆で八角形のリングに入ってトレーニングします。腕や上半身を鍛える時は、大きな特製器具を両手に持って振ります。
イランのキーワード:アバダン製油所
イラク国境に近いイラン南西部アバダンは川に面しており、ここから石油を日本など世界に運びました。イラク戦争で壊されましたが何とか復旧しました。
イランの著名人
イランの著名人最高指導者:ハメネイ師
イラン革命を主導した初代最高指導者ホメイニ師が1989年に死去し、後継者に選ばれました。黒いターバンは、預言者ムハンマドの血筋であることを表しています。(1939~)
『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』好評発売中!
ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。
その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載
好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。
掲載している国・地域
イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア
【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)
福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。
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