流鉄の役目は旅客と「白みりん」の輸送だった
流鉄の歴史は大正時代に遡ります。流山は醸造の街として古くから栄え、醤油や酒、味噌のほか「白みりん」の醸造に成功しました。江戸川の豊かな水と良質な米で製造された白みりんはたちまち名産品となったのです。
常磐線が開通すると、その利便性を痛感した流山町民が出資して流山軽便鉄道が発足します。こうして、白みりんを主体とした醸造品と旅客を輸送するため、1916(大正5)年3月、馬橋~流山間が開業しました。
町民鉄道の同線は、開業時から流山の生活に定着し、貨物・旅客の輸送量を増やしていきました。昭和初期には流山駅構内にキッコーマン工場への引込線も完成し、貨物輸送はそれまでの舟運や新たな自動車輸送にも対抗して大健闘します。
のちに流山鉄道、総武流山電鉄と名を変え、電化も行われました。田畑の多かった沿線ですが、昭和40年代から急速にベッドタウン化し、白みりんの貨物輸送も廃止され、流山線は通勤路線として発展していったのです。
流鉄の車両愛称は公募したもの
電化後の車両は大手私鉄などの中古車両で賄いましたが、1979(昭和54)年の1200形導入から「流星」「流馬」「銀河」と編成ごとに車体色を変え、愛称を付けました。現在の5000形では「流星」「あかぎ」「若葉」「なの花」「さくら」の5編成が活躍していますが、愛称はすべて沿線の利用者から公募したもので、公募による命名は1979年から続いています。各列車の先頭には愛称のヘッドマークがあり、とても誇らしげです。
流鉄が積極的に行う地域活性化
この頃から利用者と鉄道が急速に親密になり、社名も2008(平成20)年8月、なじみやすい流鉄に改められました。起源の町民鉄道に回帰したように、地域と鉄道の一体感がより強まりました。
地域活性化も率先して行い、例年、名店による食メニューが味わえ、音楽ライブも行う「流鉄BEER電車」を運行。また、終点の流山駅に利用者の交流スペースを設けるなど、流鉄は親しまれる鉄道となる努力を惜しみません。
近年は、流山駅がアニメ『普通の女子高生が【ろこどる】やってみた。』の聖地として注目され、流鉄は同作とコラボレーション。散策マップを配布するなどしファンに人気です。
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