目次
東海道新幹線開通までの道のり②:誕生を阻んだ壁
新幹線プロジェクトの元をたどると、昭和13(1938)年の東京~下関を9時間で結ぶ弾丸列車計画がその原型となっているのがわかります。弾丸列車の発想自体は明治時代からありました。険しい地形が多いところから日本で採用された狭軌(きょうき)(レール幅1067mm)でしたが、列車高速化のために、広軌(こうき)(レール幅1435mm)へ改軌させようとする高速列車運行計画が検討されていました。
ところが、計画のための私鉄設立の申請が鉄道国有法を理由に却下されたことや、戦況の悪化などから実現には至らなかったのです。
東海道新幹線開通までの道のり③:計画が東京五輪開催と結びついて急始動
新幹線計画が現実味を帯びたのは、昭和32(1957)年5月に国鉄技術研究所が開催した講演会がきっかけでした。技術的な確信を踏まえ、最高時速250kmで東京~大阪を3時間で結ぶ可能性をアピール。さらに、「新幹線の父」と呼ばれる、国鉄総裁に就任してまもない十河(そごう)信二は、東海道本線の線路を増やして輸送量増加に対応する方向でほぼ固まっていた計画を「広軌高速鉄道を別線で敷設」と主張し覆してしまいます。
その政治的手腕もあって、昭和32(1957)8月、運輸省(現在の国土交通省)に日本国有鉄道幹線調査会が設置され、新幹線計画は国政レベルに場を移すことに。そうなると、「昭和39(1964)年までに」と、東京五輪開催までに開業を望む空気が一気に濃厚となり、早期着工が決定。ここへ来て、発端は五輪とは関係のなかった事業が、世紀の祭典と結びついたのです。
いつしか国鉄内部も、東京五輪に絶対に間に合わせようと、一丸となって団結していきました。
東海道新幹線開通までの道のり④:東京五輪開催の年に全線開通を果たす
起工式は、昭和34(1959)年4月。戦前に頓挫した弾丸列車計画で確保されていた用地と、工事が中断されていたトンネルをうまく利用した結果、5年3か月という驚異的なスピードで建設工事は進み、東京~大阪515.4kmの全線開通を果たします。
東京五輪と同年に誕生した東海道新幹線は、“夢の超特急”として国民に夢と希望を与えるなか、昭和39(1964)年10月1日に開業日を迎えたのです。
新幹線の父とも呼ばれる人物は開業式典不在
くす玉割りなどのセレモニーで盛大に開業式典が執り行われましたが、そこに、新幹線計画の立役者となった十河の姿はありませんでした。3800億円にふくらんで予算を超過した総工費の責任を取る形で開業前に辞任を強いられていたためです。そして、十河の右腕として、技術的側面から新幹線建造を支えた技師長の島秀雄もまた、職を辞しており、開業式に招かれることはありませんでした。昭和48(1973)年、十河の業績を記念したレリーフが東京駅の新幹線プラットフォームに設置されました。
東海道新幹線の輝かしい歴史は現在も更新中
2020年7月1日。東海道新幹線の新型車両「N700S」が営業運転を開始しました。N700系以来、13年ぶりのフルモデルチェンジ。半世紀以上前に生まれた東京五輪のレガシー(遺産)は、今も国の大動脈を成す交通基盤として技術革新とともに受け継がれています。
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