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君主権力との対立が国を左右した

ただし群雄に仕えた名士は勢力拡大を狙ったため、彼らを重用しすぎると君主権を確立できず君主権力の弱体化につながります。袁紹も名士を尊重しすぎて破滅したひとりです。

そのバランスをうまくとったのが魏(ぎ)蜀(しょく)呉(ご)の3国である。曹操(そうそう)劉備(りゅうび)孫権(そんけん)は名士を巧みに活用して政権を築き、安定させることに成功します。しかし晩年は名士勢力と対立が生じていました。3人が亡き後、名士に見放された蜀と呉は滅び、魏は名士の司馬氏(しばし)に取って代わられたのです。

三国志の群雄と名士の関係

曹操(そうそう)
勢力拡大の過程で名士層を厚遇しますが、君主権力の確立を企図すると対立が激化。曹操没後、名士層の勢力拡大が続き、やがて司馬氏による帝位簒奪へと至ります。

孫権(そんけん)
徐州の混乱を避けて移住してきた張昭ら北来名士と江東の名士に支えられ、呉の支配権を確立したものの、潜在的に名士層の勢力拡大と対立関係にあり続けました。

劉備(りゅうび)
諸葛亮ら荊州名士を厚遇することで勢力基盤の確立に成功。益州入り後は、一時的に法正ら益州名士を厚遇するも、次第に取り込んで政権を安定させます。

董卓(とうたく)
宦官が粛清されたあとの朝廷に名士を招致して支配の安定化を試みますが、暴政により名士の支持を失います。

袁紹(えんしょう)
名士を尊重しすぎて君主権が脆弱なままでした。さらに名士層が分裂して抗争を展開したことが滅亡の一因となります。

袁術(えんじゅつ)
家柄を笠に着て奢り名士をないがしろにしたため、政権基盤が安定しませんでした。

公孫瓚(こうそんさん)
名士の価値を認めず、権力強化に努めた結果、地域支配が安定しませんでした。

劉表(りゅうひょう)
名士層の儒教的価値基準を利用して政権を樹立しましたが、君主権の確立に失敗します。

もっと知りたい!『三国志』

当時の官僚任用制度は、地方官や地方の有力者が管轄内の優秀な人物を推薦する形式をとっていました。これを郷挙里選(きょうきょりせん)といい、曹操や孫権、司馬懿、荀彧(じゅんいく)など三国志に登場する多くの人物がこの制度によって官途についています。また、人物評については許劭(きょしょう)の「月旦評」が有名でした。

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群雄が割拠した三国志を勢力図で解説。正史vs演義、人気の三国志作品も徹底比較!

数多の武将たちが群雄割拠し、栄枯盛衰の理のもとに散っていった三国志。はるか昔の、しかも他国の歴史であるにも関わらず、日本ではマンガやゲームなど多くの作品の題材となり、どの世代も魅了している。本書では、三国志のなかでも重要な出来事や戦いを図説。なぜその土地が重要だったのか?その戦いがなぜそこで起こったのか?地図とともにみれば、三国志の本当の姿が見えてくる。また、正史としての三国志と、物語としての三国演義の比較、マンガや映画など人気作品を分析したコラムも三国志ファン必見!

【見どころ】目次より一部抜粋

■序章 三国志とはなにか?
【『三国志』と『三国志演義』】三国志といっても正史と演義のふたつが存在する
【日本人と三国志】江戸時代に始まる日本の三国志ブーム
【名士の社会】三国志の争いに大きな影響を与えた人々

■第1章 曹操の華北制覇
【黄巾の乱】太平道の張角が信徒を率いて蜂起! 群雄割拠の時代が幕を開ける
【董卓の死】子飼いの将に裏切られ命を落とした暴君
【呂布追討】呂布に徐州を奪われた劉備、曹操とともに呂布を討つ ほか
~コラム~くらべて楽しむ三国志
董卓の死/曹操・劉備・孫権の人物像

■第2章 三国時代のはじまり
【三顧の礼】荊州にて不遇の日々を送る劉備、諸葛亮と出会う
【赤壁の戦い】業火が曹操の水軍を焼き尽くした三国志最大の戦い
【樊城の戦い】樊城を陥落寸前まで追い詰めた関羽、呉の寝返りにより麦城に散る!
【曹操の死】曹操の死と曹丕の即位が三国時代の幕を開ける ほか
~コラム~くらべて楽しむ三国志
三顧の礼/諸葛亮と周瑜の角逐/錦馬超/『孟徳新書』/関帝信仰

■第3章 諸葛亮の北伐
【曹丕の南征】弱体化した呉を狙うも敗退し、蜀呉同盟復活の契機となる
【第一次北伐】劉備の念願をかなえるべく、諸葛亮が長安攻略を目指す
【第五次北伐】魏の持久戦術に成す術なく、五丈原で諸葛亮の命が尽きる

■終章 三国時代の終焉
【蜀の滅亡】厭戦気分の高まる蜀になだれ込み、成都を強行軍によって占領した魏
【魏の滅亡】司馬氏に乗っ取られた魏、禅譲によって晋に取って代わられる
【呉の滅亡】暴君・孫晧の悪政に付け込んで一斉に晋軍が侵攻 ほか

監修者紹介

渡邉義浩(わたなべよしひろ)
1962年生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科史学専攻修了。早稲田大学文学学術院教授。専門は中国古代思想史。文学博士。主な著書に『三国志事典』(大修館書店)、『「三国志」の政治と思想 史実の英雄たち』(講談社)、『三国志 演義から正史、そして史実へ』(中公新書)などがある。

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