【三顧の礼】『三国志演義』では劉備が諸葛亮に泣き落とし
『三国志演義(さんごくしえんぎ)』は、曹操(そうそう)の「奸(かん)」を描き、かつ話を分かりやすくするため、母から偽の手紙をもらった徐庶が、去り行く自分の代わりに、諸葛亮を勧めたとされます。しかし、徐庶が曹操の臣下となるのは、母を捕らえられた長坂(ちょうはん)の戦いの後です。史実としては、徐庶を介した諸葛亮と劉備の駆け引きなのです。『三国志演義』では、訪ねてきた劉備は諸葛亮に、「先生が出仕しなければ、蒼生(たみ)はどうなりましょうか」と言って泣く。「蒼生(たみ)」のために泣く劉備を見て、諸葛亮は「犬馬(けんば)の労」を尽くすことを誓います。
【三顧の礼】日本の『三国志』の各展開
日本の三国志は、「漢の天下」のために劉備は泣く。その方が、物語として相応しい。しかも、吉川英治の『三国志』では継承している「犬馬の労」という言葉も、横山光輝の『三国志』は採用していない。それにより、諸葛亮は、自らの志に基づいて、劉備とともに漢の天下を建て直すために出仕したことになります。横山『三国志』は、曹操に代わって物語の主人公になる諸葛亮の志を見事に表現しているのです。
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群雄が割拠した三国志を勢力図で解説。正史vs演義、人気の三国志作品も徹底比較!
数多の武将たちが群雄割拠し、栄枯盛衰の理のもとに散っていった三国志。はるか昔の、しかも他国の歴史であるにも関わらず、日本ではマンガやゲームなど多くの作品の題材となり、どの世代も魅了している。本書では、三国志のなかでも重要な出来事や戦いを図説。なぜその土地が重要だったのか?その戦いがなぜそこで起こったのか?地図とともにみれば、三国志の本当の姿が見えてくる。また、正史としての三国志と、物語としての三国演義の比較、マンガや映画など人気作品を分析したコラムも三国志ファン必見!
【見どころ】目次より一部抜粋
■序章 三国志とはなにか?
【『三国志』と『三国志演義』】三国志といっても正史と演義のふたつが存在する
【日本人と三国志】江戸時代に始まる日本の三国志ブーム
【名士の社会】三国志の争いに大きな影響を与えた人々
■第1章 曹操の華北制覇
【黄巾の乱】太平道の張角が信徒を率いて蜂起! 群雄割拠の時代が幕を開ける
【董卓の死】子飼いの将に裏切られ命を落とした暴君
【呂布追討】呂布に徐州を奪われた劉備、曹操とともに呂布を討つ ほか
~コラム~くらべて楽しむ三国志
董卓の死/曹操・劉備・孫権の人物像
■第2章 三国時代のはじまり
【三顧の礼】荊州にて不遇の日々を送る劉備、諸葛亮と出会う
【赤壁の戦い】業火が曹操の水軍を焼き尽くした三国志最大の戦い
【樊城の戦い】樊城を陥落寸前まで追い詰めた関羽、呉の寝返りにより麦城に散る!
【曹操の死】曹操の死と曹丕の即位が三国時代の幕を開ける ほか
~コラム~くらべて楽しむ三国志
三顧の礼/諸葛亮と周瑜の角逐/錦馬超/『孟徳新書』/関帝信仰
■第3章 諸葛亮の北伐
【曹丕の南征】弱体化した呉を狙うも敗退し、蜀呉同盟復活の契機となる
【第一次北伐】劉備の念願をかなえるべく、諸葛亮が長安攻略を目指す
【第五次北伐】魏の持久戦術に成す術なく、五丈原で諸葛亮の命が尽きる
■終章 三国時代の終焉
【蜀の滅亡】厭戦気分の高まる蜀になだれ込み、成都を強行軍によって占領した魏
【魏の滅亡】司馬氏に乗っ取られた魏、禅譲によって晋に取って代わられる
【呉の滅亡】暴君・孫晧の悪政に付け込んで一斉に晋軍が侵攻 ほか
監修者紹介
渡邉義浩(わたなべよしひろ)
1962年生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科史学専攻修了。早稲田大学文学学術院教授。専門は中国古代思想史。文学博士。主な著書に『三国志事典』(大修館書店)、『「三国志」の政治と思想 史実の英雄たち』(講談社)、『三国志 演義から正史、そして史実へ』(中公新書)などがある。
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