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豊橋の歴史②:製糸都市として発展

1889(明治22)年に東海道線が開通する前後から、豊橋市は製糸都市と軍都としての性格を強めていきます。

製糸では蚕の繭から絹糸を紡ぎますが、豊橋の二川で製糸を営む女性が玉繭(たままゆ)(2匹の蚕がつくった繭)から糸を引き出す技術を考案したことから、玉糸(たまいと)製糸が豊橋の特長となり、その発展は乾繭(かんけい)(生繭を乾燥させたもの)の取引所が設置されるほどでした。養蚕(ようさん)自体も活発に行われ、20世紀前半には豊川の河岸段丘上や然堤防上に桑畑が広がっていたのです。

豊橋の歴史③:軍都としての発展

軍都の面では、1885(明治18)年に歩兵第18聯隊(れんたい)の兵舎が吉田城跡地(現・豊橋公園)に建設されました。豊橋公園には、聯隊記念碑をはじめ、当時の正門や哨舎、弾薬庫、防水槽などが現在も残っています。

「陸軍第15師団」の設置とその後

1907(明治40)年、豊橋市内に陸軍第15師団が拠点を置きました。兵舎は国道259号と県道2号の分岐地点から国道259号沿いに並び、敷地は約50万坪に及んだのです。現在、これらは学校や公共施設となっていますが、愛知大学には第15師団司令部庁舎、将校集会所、師団長官舎が現存しており、南部中学校や豊橋工業高校、王ヶ崎東公園などに門や哨舎が残ります。

第15師団は第一次世界大戦後の軍縮を受けて廃止されましたが、やがて同じ場所に豊橋陸軍教導学校が開校しました。この大講堂や出張所の門と哨舎も現存します。

また、高師原(たかしばら)・天伯原(てんぱくばら)の陸軍演習場であった高師緑地公園には土塁、向山緑地公園には訓練用のトーチカなどが残されています。

「豊橋海軍航空基地」の設置とその後

三河湾(大崎島の埋立地)には、豊橋海軍航空基地がつくられました。八角形をベースとした敷地に1500m×3本、1000m×1本の滑走路が整備され、格納庫や整備工場、兵舎も建設されました。

戦後は払い下げられ農地となりましたが、1958(昭和33)年にトピー工業(当時は東都製鋼)の製鋼工場が操業を開始。1972(昭和47)年、大規模な埋め立てが行われ、明海(あけみ)臨海工業地区となりました。戦争遺構は「海軍橋」の地名と橋の一部が確認できる程度です。

豊橋公園

住所
愛知県豊橋市今橋町
交通
JR東海道新幹線豊橋駅から豊鉄市内線運動公園前・赤岩口行きで9分、豊橋公園前下車、徒歩5分
料金
情報なし

豊橋の歴史④:戦後、産業の街へ

軍都として活況を呈した豊橋市街地は、太平洋戦争の空襲や地震で焦土と化しました。

しかし戦後、戦災復興計画都市の戦災モデル都市に指定され、道路の拡張や町名整理などを実施。復興が進み、古くから名産の柿や青じそ、スイカ、キャベツ、メロン、花き類といった農業、ノリやウナギの養殖、織物工業、前出・明海臨海工業地区での自動車関連産業などが大きく発展。交通網も充実し、東三河の中心地に変身したのです。

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・1500万年前の奥三河には富士山級の大火山があった!
・自然の断崖が名城を守る!大地の端に築かれた名古屋城
・西南日本を分断する大断層、中央構造線が奥三河に露出!
・知多半島の南部の地層で産する、美しく多様な深海生物化石群
・県内の死者予測は2.9万人、南海トラフ地震とは何か?
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・・などなど愛知のダイナミックな自然のポイントを解説。

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・愛知県の鉄道の始まりに名古屋駅は存在しなかった!?
・世界初のビュフェもあった幻の関西鉄道はどんな路線?
・名鉄名古屋本線はかつて名古屋を境に東西で別の私鉄?
・新幹線に負けない魅力満載!進化を続ける近鉄名阪特急
・国産初の超低床路面電車!リトルダンサーが走る豊橋鉄道
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・東海地方最大の前方後円墳、断夫山古墳が示唆するもの
・須恵器の猿投窯に始まり中世に発展した愛知の窯業
・応仁の乱の発端となった大激戦は尾張と三河の守護職争い!?
・信長が少ない軍勢で挑んだ桶狭間の戦い勝利の裏側
・家康後の岡崎城主・田中吉政が築いた岡崎二十七曲りとは?
・都市ごと清洲から名古屋へ移転した清洲越えがすごい!
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