宮城の白鳥の飛来地:白石川周辺に伝わる白鳥信仰
一方、県南の白石川周辺も白鳥の飛来地となっていますが、この地域では、白鳥を神の使いとして崇める白鳥信仰が根付いています。
白鳥信仰とは
なかでも、蔵王町の刈田嶺神社は、祭神のヤマトタケルが死後に白鳥に生まれ変わったという白鳥伝説の広まりとともに、白鳥明神を祭って白鳥大明神という別号を持つようになり、信仰の中心地になっていきました。
拝殿には、白鳥を画題とした絵馬(額絵)が数多く飾られ、信仰の厚さを物語っています。また神社裏手には、白鳥を浮き彫りにした5つの石碑「白鳥古碑群」が並んでいます。江戸時代に建てられた白鳥の墓碑で、一番古いものは1673(寛文13)年の建立です。かつて、この場所に死んだ白鳥を葬っていたといいます。このほか、村田町、柴田町など県南の多くの地域に白鳥神社が分布し、大河原町の大高山神社にも白鳥信仰の歴史が残っています。
仙台藩の記録にも残る白鳥信仰
白鳥信仰の広がりは、藩政時代の様子が記録された『伊達治家記録(だてじけきろく)』や『奥羽観蹟聞老志(おううかんせきもんろうし)』などにも記されるほどで、伊達家も配慮していたようです。政宗は息子の忠宗に宛てた書状で、この地域では白鳥を鉄砲で撃たないようにと記していたといいます。
白鳥信仰がきっかけで起こってしまった事件
1868(明治元)年には、白鳥をめぐって事件も起こりました。戊辰戦争で仙台藩が降伏した後、領内で新政府軍の兵士が白鳥を捕殺しようとしたところ、その場に居合わせた柴田家臣が白鳥を守ろうと兵士に向かって発砲してしまったのです。
これが新政府側の耳にも届き、事件に関与した家臣たちは処刑となり、事件の責任を取って柴田家十四代当主・意広(もとひろ)も切腹しました。事件後、柴田家臣の多くが、現在の北海道伊達市に移住したといいます。
白鳥神社(村田)
景行天皇の時代に東夷征伐に出向いたヤマトタケルの陣営の跡地と伝わります。5月に満開となる樹齢800年の藤は、この地で祈願した源義家が敵に囲まれた際、大蛇に化けて救ったという伝説を持つ奥州の蛇藤。これにちなんだ祭もあります。
刈田嶺神社
刈田嶺神社の現在の社殿は1718(享保3)年に建てられたもの。もともとは刈田嶺を祭っており、戦国時代中期に現在地に移されたと伝えられています。神社裏手には「白鳥古碑群」が並びます。
白石川
源流の蔵王連峰から県南部を東流し、柴田町で阿武隈川に合流します。全長約64km。大河原町の白石川堤では、春になると「一目千本桜」が満開になります。下流には、 徳富蘇峰が命名した美景で知られる碧玉渓があります。
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