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徳川家康の遺体は久能山にある?

徳川家康の死去の翌年、天海僧正により天台系の山王神道の観点から神号を「東照大権現(とうしょうだいごんげん)」とし、日光山へ改葬。この改葬は、藤原鎌足(ふじわらのかまたり)が死後1年後、遺体を摂津から大和に移したという故事に倣ったものです。しかし、久能山での埋葬方法は土葬なので、そもそも遺体を移動するのは難しいのではないか、との疑問が残ります。

また、久能山東照宮には徳川家康の墓所とされる「神廟(しんびょう)」という石造りの宝塔が建っていますが、日光に改葬したのであれば久能山に廟所を築く必要はなかったのでは?という見解もあります。

さらに、金地院崇伝の『本光国師日記(ほんこうこくしにっき)』には、「日光山に小き堂をたて。勧請(神仏の分身・分霊を移して祭ること)し候へ」と記されていますが、明確に改葬せよという記載はありません。

幕府の文献に「改葬」とあったため、そう信じられていましたが、近年の研究では、遺体は移動しておらず、あくまで神霊のみを移した(勧請した)だけと考えるのが自然ではないか、という説が有力です。

徳川家康の墓所「神廟」

徳川家康の墓所「神廟」

久能山東照宮の本殿後方にある廟門から40 段の石段を上った所にある、徳川家康の墓所「神廟」。当初は木造檜皮造りでしたが、1640(寛永17)年、3代将軍・家光が現在の石造宝塔に造り替えました。

徳川家康の遺体が久能山にあるという根拠

天海僧正も「あれはある奈け連は奈ひ尓駿河なるく能奈き神の宮遷し哉」(阿部正信『駿國雜志』)という和歌を残しています。

これを現代の仮名に変えると「あればある なければないに 駿河なる くのなき神の 宮遷しかな」となるのですが、この「くのなき神の宮うつしかな」の部分について、一説によると「軀(く=亡骸)のない神様の宮遷し」と読み取ることもでき、遺体は移されていないという説の根拠の一つになっています。

徳川家康の遺体埋葬場所の真相は?

徳川家康が葬られた久能山の神廟も、日光の奥宮も、これまで発掘調査は行なわれていません。研究者の中には、遺体は日光にあると考える人もおり、死後400年以上経っても論争は絶えません。

真相は未だ謎に包まれているのです。

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・日本考古学の聖地・登呂遺跡
・日本書紀に見る静岡とヤマトタケルの伝説
・源頼朝も流された流刑地伊豆
・下田が開港の舞台になったのはなぜか
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・家康の遺体は日光ではなく久能山にある?
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・バイクに楽器。浜松のものづくりは綿花の栽培から
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